「目標は自主映画づくり~自分の演技を通じ、発達・身体両方の障害をリアルに伝えたい~」(後編)愛澤咲月さん

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松葉杖と一緒に写してくださいね!と愛澤さん。

脳性まひと、発達障害(ADHD・空間認識が低いLD)を持った愛澤咲月さん。高校生での学園祭をきっかけに演技の楽しさに目覚めるも、そこには立ちはだかる壁がありました。それを経ていま、舞台演技、また自主映画に対してどのような想いを持っているのでしょうか?前編に引き続き、後編も対談形式でお届けします。

■大反響があった学園祭から初舞台に立つまで

―舞台を目指したきっかけは何でしたか?

愛澤さん:まず初めに高校3年生の学園祭で、ヘレンケラー役を演じたんです。その時は「セリフの少ない役だし、覚えなくていいや」と軽い気持ちでして(笑)。先生からの推薦もあったしやってみようと思いましたね。

演技後、「すごく良かった」って、先生、親も言ってくれました。他のお芝居を見に来ていた親御さん、他のクラスの先生からも、一週間経っても尚「ヘレンケラーの演技良かったね」と声をかけられることも。取り柄のないと思い込んでいた自分が、そのとき初めて「褒められる」という経験をしました。

―次に演技したのはいつのタイミングでしたか?

愛澤さん:社会人を2,3年経てお金が貯まり、何か始めたいな!と思っていました。丁度、mixiで劇団員募集しているのを見つけて、脚が悪いけどいいですか?と問い合わせると快くOKをいただきました。こんなに簡単に自分でも演技の世界に入れるんだ、と嬉しくなりました。その後、団長がお金を持ち逃げする事件があり、演技は続けられませんでしたが(笑)、いい勉強になりました。

―それはそれは…大変でしたね。そこから、初舞台に立ったのはいつですか?

愛澤さん:その後、義足のダンサーで女優の方から、「私の企画するプロジェクトのお芝居に一緒に出ませんか?」とお声がけいただいたんです。何の経験もないのに、「やります!」と言って勢いで応募してしまいました。

―初舞台で、苦労された点はありますか?

愛澤さん:その練習過程で一気に孤立してしましたね。周りの方は基礎を丁寧に積んでおられる方ばっかりだったのに対し、自分は「脚本家って何?」っていう状態でしたから(笑)。

あとは、空間認知の弱さや聴覚過敏が原因だと思うのですが、天井が高いところや音が響くところがすごく苦手なんです。楽器の音が響くのが怖かったですね。劇場って響くし舞台の高さが怖く立つことが出来ないため、どうしても座っている役になる、という現実にも向き合わざるをえませんでした。

―どのような感覚か具体的に詳しく教えてもらえますか?音を強く感じすぎて怖いのでしょうか?

愛澤さん:物心ついた時からずーっと自覚症状はあったんですが、「こわい」という3文字でしか感覚を表せなかったのだと思います。貧血を起こして倒れる、とかそんなことではないんですけどね。ボールペンのカチカチという反復的な音、ボーンと反響するような音、シンバルがバーンって鳴るような大きい音もこわいですね。あと、風鈴など揺れているものを見るのも怖いです。脳性まひか、発達凸凹の空間認知の弱さ、どちらから来ているのかは定かではないのですが。

―沢山ご苦労があったかと思いますが、逆に初舞台で楽しかったことはありますか?

愛澤さん:新しいことするのがとにかく楽しかったです!ADHDの特性からか、初めての人と会ったり、やったことないことを練習したり、そういう知らない世界、新体験に囲まれる日々がすごく楽しかったですね。こんな大変なこと二度とやるもんか!辞めてやる!とも思った時期もあったんですけどね。

―新鮮な感じがワクワクしていいですよね。二度とするもんか!と思いながらも再び演技を続けようと決意されたのはなぜですか?

愛澤さん:やっぱり本番マジックでしょうね(笑)。あとは舞台後、「せっかく役者になったんだから、これからも芝居を続けてくださいね!」と演出家の方に言われ、約束したんです。今も胸に響いています。

■演技を1から学び直す決意を

―そこからすぐ、今の練習場所に通い始めましたか?

愛澤さん:その後は実はいろいろと模索しまして。まず、脳性麻痺や身体障害者の演劇集団に入りました。そこは、セリフ芝居がなく、自分のやりたい方向とは異なると気づいて辞めました。

次に2年くらい、小学校、老人ホームなどで、ちょっとしたお芝居やレクリエーションする団体に所属しました。楽しかったのですが、芝居が上手くなりたい自分にとっては居続ける場所じゃないと感じました。その時、1から芝居を勉強したいという強い想いが芽生えました。

それを経て、今通っている、『演劇ワークショップ(定期クラス)』へ。それも申し込むかどうか、1年間、悩みに悩んだんですけど。脚が悪いと正直に伝えた上で勇気を出して無料体験に行ってみました。実は音が怖い特性があるということもスタジオの先生に相談したら、小さい部屋での稽古場だから大丈夫と聞いて安心しましたし、他に車いすの生徒さんも通っていることを知りました。障害者が演技をすることに対して、偏見がない先生だと感じまして。中には、演技をすることに対して「見られるのに、脚が治ってからじゃなくていいの?」という方もいらっしゃいますから。

―なるほど。いい先生との出会いによって、安心して通い始められたのですね。その後練習ではどうでしたか?

愛澤さん:最初から台本をするわけじゃなくて、言葉のキャッチボール、ジェスチャーしりとりなど、コミュニケーションを積んでいきます。その後、本番に向けた台本を練習していきました。

どんなゲームをするか、先生が説明してくれるんですけど、やっぱりルールを私は1回で覚えられないんですよ。あとは毎回遅刻して、「遅刻のさっちゃん」と呼ばれていましたね。リズム体操も著しくできなかったです(笑)。私を、先生がそういうキャラクターにしてくれはったことで、居心地よく続けられ、今年通って3年目になります。「出来ないことは、見ているんじゃなくて、出来る形に変えて工夫してやりなさい」と仰るので、孤立せずに済んでいます。立たなくていいように、車いすの役も用意してくれて、ありがたいなと感じています。

愛澤さんに、今後の目標を描いていただきました。「3年以内に自主映画主演!」

愛澤さんに、今後の目標を描いていただきました。「3年以内に自主映画主演!」

 

■演技、また自主映画にかける想い~女優 愛澤咲月として~

―演技を本格的に学ばれて3年目に突入した今、この先どのような演技が出来るようになりたいという目標はありますか?

愛澤さん:どこにでも通用する、どんな演技でも出来るようになりたいです。舞台用の演技だけじゃなくて、やっぱり私は映画に出たくて。映画に向けた映像系のお芝居ができるようになりたいです。舞台では人を惹きつけられるような演技が出来るようになりたいです!

―.舞台ではなくて、映画を作りたいと思ったきっかけは何ですか?

愛澤さん:舞台だと壇上に立てないのですが、映像だと松葉杖を使って動ける範囲も広がり、自分の演じられる幅が広がるなと。あるとき、体調が良くなったら舞台に来てもらいたいと心から思っていた友人が、2年前に突然亡くなったんですね。そのとき、舞台だと見に来られない人もいるのだとはっとしたんです。映画だと、録画したものを病室で見てもらうことができるなと。舞台特有のライブ感は出せないけど、残していく、より多くの人に見てもらえるという意味で良いツールだと思いました。

―「自主映画」がいいなという理由はありますか?やはり企画に携われる点ですか?

愛澤さん:まず、自分の実績を作りたいのがありますね。夢を達成するための第一歩というか。最終的には、映画のオファーが来る。「愛澤咲月をまた使いたいな、また会いたいな。一緒にやりたいな」と思ってもらえる女優になりたいんです。

そうなるために、自分の商品を一本持ちたいんです。一本これっていうものがあれば証明できるのかな。クランクインからアップまで全部に携わりたい。最初から最後まで映画作りに携わりたくて。そうなると自主映画かなと。

―映画完成はいつの予定ですか?妄想でいいので(笑)!

愛澤さん:もう完成していたはずなんですよね本当は(笑)。でも、早く実現させたいです!1年以内…確実にということで3年以内かな。

―ぜひ、実現させましょう!!愛澤さんの描く自主映画のイメージはどのようなものですか?

愛澤さん:見える障害と見えない障害、2つを持っている私だから描ける作品を作りたいという想いはあります。身体障害を隠したかったこれまでずっと、発達障害を可視化したくてたまらない2年間を経た私は、それぞれの困難を分かりやすく伝えたい想いがあります。また、映画の最後エンドロールに女優 愛澤咲月として自分の名前が流れることに憧れますね。

―何分くらいの上映予定ですか?ちなみにどんな人に見に来て欲しいですか?

愛澤さん:うーん120分くらいかなぁ。そのあとお客さんに向けて、ちょっとしたアフタートークをしたいですね。見に来てほしいのは、障害者雇用を考えておられる企業や、障害を持ったお子さんのいる親御さんですね。発達障害の勉強材料として見てもらえたら。実際に、転職活動をしている際、「発達障害について無知なのできちんと勉強したいんです」という熱心な人事の方と出会い心が動かされました。

―愛澤さんの自主映画を見て、その後どんな風にオファーが来たら嬉しいですか?

愛澤さん:女優としてオファーが来てほしいですね。演技力を評価してもらえたら素直に嬉しいだろうなと思います。以前、映画のエキストラ募集があって、2時間かけて雪の中撮影場所に行ったのに、私の脚をみて突き返された経験があるんですよ。一方で、障害者は感動を誘う役として主役を演じることはありますよね。そうでは無くて、愛澤咲月として、演技力で勝負したい。障害者にも女優は出来るし、舞台や映像の中に存在していい。それが当たり前な風潮になったらいいなとも思っています。

 

取材をする中で、愛澤さんだからこそ生まれた、演技への熱い想いを感じました。「舞台・映像の中に障害を持った方がいるということがもっと当たり前の風潮になったら」という愛澤さんの言葉に共感しました。

夢への第一歩として、LASSで発達凸凹の困りごとを分かりやすく伝える動画を愛澤さんと一緒に作り、youtubeで配信することになりました!全力で愛澤さんの自主映画製作を応援したいと思います!LASS to the movie.お楽しみに!

(取材・emo/yu-ka  文・yu-ka 

編集・yuh   撮影・naoya)

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