「発達の凹を克服しない」NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表 広野ゆいさん(第4回/全5回)

■できないから「お互いに」頑張る

emo:「大人の発達障害」という考え方は当時、無かったということなんですね?

広野さん:そうそう!小児科って15歳までだから、子どもの病気はその年齢までだし、20代後半の自分が診断してもらえる、なんていう発想がそもそも無かったんですよね。後に出版されることになる『片づけられない女たち』という本に、女性のADHDの生活の困難・自尊心の低さ・ホルモンバランスの問題、あと薬物治療の話まで書かれていて、それを読んでようやく病院に行ってみようと思えたんです。

仕事ができるコツ?! DDAC事務所の忘れ物防止ふせん

emo:僕は今まさに就活中(取材当時)なんです。どうしたら発達さんが働きやすくなるのか、広野さんからアドバイスいただけませんか?

広野さん:当事者としてすべきなのは、ちゃんと発信することですかね。「自分はこういう人間」と説明できることが大切だなと思います。私自身、昔はできないと言えなくて「出来ます」って言ったけど本当は出来ないことが、よくありました(笑)。

今の職場には、最初から発達障害のピアサポーターとして採用されました。事務仕事がとても苦手で、私が30分とか1時間かかる書類を、事務の人は5分か10分くらいで作ってくれる。そりゃ絶対お任せしたほうがいいだろうという流れになりました。交通費の清算、日報とか。ダブルブッキングをしていないか、のチェックもお願いしていますね。

emo&yu-ka:あ~。

広野さん:チェックしてもらわないと「同じ時間に、二人相談に来てるんですけど!」っていうことになりかねませんから(笑)。

yu-ka:就職している発達さんも多いと思いますが、今の職場で周りの方にどのように特性を伝えたらよいか、アドバイスいただけませんか?

広野さん:難しいですよね~。やっぱり、いきなり「出来ません!」って言うのではなくて、「苦手なんです」って言いながら、やってみるということも必要かなと思います。というのは、環境によって、出来たりできなかったりしますからね(笑)。何がどこまで出来ないかは、結構、試行錯誤なんですよね。最終的に「これは会社がサポートすべきだ」「この人には、させないでおこう」っていうのは、会社が判断することですからね。

合理的配慮ってどこまでしたらいいの?ってよく聞かれるのですが、そのポイントを、職場と当事者で「一緒に見つけていく」ことが必要だと思います。コミュニケーションは双方向ですから、「発達凸凹の合理的配慮=これだ」と言い切るのは難しいですね。

emo:やりがちですよね。「私・僕は障害があるのだから助けてもらうのが当然」っていうスタンスの発達さんも少なくないように感じます。自分が企業だったら「そう思ってるあなたと一緒に働くのは無理です」とつい言ってしまいそうな。

広野さん:そうそう。そこは「お互いに」頑張らなきゃいけないかな、と思いますね。企業側としてもまず、今は人口が減っているわけで、多様性を受け入れざるを得ないと感じていますね。「みんな同じ」という価値観をそろそろやめた方がいいと。健常者の方も、いつ事故にあったり病気になられたりするか分からないですし。

多様な人に対応できるところが以前より増えていると思いますね。好意的に発達障害の雇用を進めようと動いている企業も多いです。10年前は、障害者雇用はコストがかかるだけでメリットがないと言う企業がほとんどでしたし、精神障害の求人はほとんどありませんでした。

判断するのは会社だから、当事者は「出来ることを出来る範囲で頑張る」としか言えないですかね。「一人で頑張る」必要はないです。一度や二度、仕事で失敗しても「いいじゃん。まだ人生の途中なんだ」と思えたら楽しく生きていけるんじゃないかなって。

■「いいじゃん。まだ人生の途中なんだ」

yu-ka:失敗してもいいと言ってくださっているのに、矛盾になるかもしれないのですが、当事者が避けた方がいいだろうなと思われる職業があったら教えてください。

広野さん:まずね、「手に職をつける」「条件がいい」「世間体がいい」とかで仕事を選ばない方が賢明か思います。結局「不安要素を取り除くための仕事選び」になっている。上手くいかないので、自分をちゃんと見て「自分が出来そうなこと」をどんどんやってみたらいいと思います。失敗しても「いいじゃん。まだ人生の道の途中なんだから」と。

emoの就活や適職の疑問に答える広野さん

私自身、離婚したとき「普通の人みたいにならなくていいんだ」レールを降りられたという、安堵感があったんですよ。「自分で自分の人生を決めていっていいんだ」、「普通という枠から抜けられた」と。

emo:その殻を破りたいなと思います。

広野さん:障害者雇用の枠で活躍するのも選択だと思いますね。関わり方によって、普通の人より成果が出せる発達さんもいると、企業は気づき始めています。「やり方」が違うだけでね。

就職した発達さん一人ひとりが、頑張ることが大事かなと思いますし、それによって会社の発達凸凹への見方が変わるのではないかと思います。

emo:「みんなと同じ」じゃないからいいんだな、と思われたいですね。

■広野さん、今のキャリアの原点

yu-ka:広野さんご自身のお仕事エピソードも聞かせていただけませんか?

広野さん:あれ、途中でしたっけ(笑)。私は秘書を辞めた後は、保険の営業をやったんですね。「苦手な数字を克服しよう」という理由で(笑)。保険って、健康な人が契約に繋がりやすいのですが、私、病気の人のほうが興味があって、保険請求の手続きを熱心にやっていました。お客さんやご家族から「いつもありがとう」って野菜やお菓子をもらうんだけど契約はもらえないみたいな。今はそれはそれで良かったなと思います。

emo:そのご経験が、今のお仕事に活かされているのですね。

広野さん:そうですね、お金や病気の知識が出来て、今の相談の仕事に活かされている気がします。

今のカウンセラーの仕事も楽しいです。20年も30年もひきこもっていた人が相談に来ます。そういう方って、自助会にはあまり来ないから会えないじゃないですか。だから「20年もひきこもっていたんですが、すごいですね」って感じて。

一同:(笑)

yuh:ビンテージものが手に入った的な(笑)。

広野さん:そうそう。他の人が避けたくなるような難しいことも、私は楽しく感じるんです。当事者の方と一緒に、パズルを解いているような感覚です。そういう意味では、カウンセラーの適性があったのかなと思います。私の場合、資格を取ったのは支援員になった後なのですが、「資格を取る」ということも、発達さんの中には得意な方も多いかなと私は思います(笑)。

あと、私自身がこれまでに半端ない数の当事者と会っているのも強みですね(笑)。

yu-ka:そうですよね(笑)。のべ、何人くらいですか?

広野さん:ほっとサロンは、年間延べ500~600人。あと、全国の当事者会にも行っているので、年間1,000人ですかね。仕事でも発達凸凹担当ですし。

最初のころのADHDの会の仲間にはIT研究者とか、当事者のDr.もいて。自分よりよっぽど優秀な人たちもたくさんいました。だから、「発達凸凹だからできない」っていうことではなくて、幅広い世界を見られている、のは強みかなと思います。

できないからこそ、普通でないからこそ見える世界、分かることって多いんですよ。普通の人が普通の世界で生きているよりも、より深い、より濃い人生を送れると。生きる時間が長い、短い、生活が出来る出来ないとか、そういうことではなくて。それを学んだんです。

マイナスなことは、全部「途中」なだけで「失敗」じゃないんです。

yu-ka:うー。私もそう思えるようになりたいです。

広野さん:最近は、こういうことを人前で話す機会を、だんだんもらうようになったんですね。講演って一方的に話すじゃないですか、だからこれもASDにとって得意分野だと。

emo&yu-ka:なるほど笑

広野さん:皆の話を聴いて、分かりやすくして発信することが、一番の得意かもですね。発信力は発達さんの強みの一つだと思いますよ。私の知り合いやサポートしている人の中にも、企業のSNSやブログの担当で大活躍している人がけっこういます。

yu-ka:それは本当に素敵な凸ですね。私たちもメディアなので、発達凸凹としての発信力が活動に生きればと思っています。LASS to the dreamも広野さんや発信が得意な発達さんに応援いただきたいです!!

(取材・emo & yu-ka 文:yu-ka 編集:yuh & emo 撮影:yuh)

最終第5回は、広野さんの珠玉の名言をお送りします。当事者会(セルフ・ヘルプ・グループ)を潰さないノウハウから、広野さんが気づかれた「幸せ」になれるたった1つのコツまで。広野ゆいさんインタビュー、最後までお楽しみに!!

【未公開】「発達の凹を克服しない」NPO法人 発達障害をもつ大人の会(DDAC)代表 広野ゆいさん(第5回/全5回)

「発達の凹を克服しない」NPO法人 発達障害をもつ大人の会(DDAC)代表 広野ゆいさん(第1回/全5回)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です