「発達の凹を克服しない」NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表 広野ゆいさん(第5回/全5回)

■当事者会(セルフヘルプグループ)が潰れないコツ

emo:DDACさんでの、3年、5年後の想いってありますか?

広野さん:当事者会(セルフヘルプグループ)が、どんどん広がったら嬉しいなと思うんですよね。発達障害の当事者会を立ち上げると、宗教の方が来たり、パニックになる方がいたり、警察沙汰になったりもするのですが。グループのリーダー同士でそういう課題の支え合いが増えたらいいなと思います。

ユーモアたっぷりの広野さんに、取材は終始なごやかでした

emo:当事者会にお邪魔するとお喋り好きの方が多いなと感じるのですが、素で居られる居場所だから、安心して喋り続けられるのかな、と。

広野さん:最長で、8時間喋りっぱなしの人もいました、入れ代わり立ち代わりで話を聴いていたんですけど。よっぽど聞いてほしかったんだなと思いました。そういう、たくさん話すのは最初に来た人で。

うち(DDAC)は、半分以上が常連さんなんですね。一人でいる方に話しかけてくださったり、「この内容だったら、この人に聞いたらいいよ」と勝手に繋いでくれたりして、スタッフが楽です。そうやって広がる「場の作り方」のノウハウを共有したいなと思っています。じゃないと、当事者が作るグループはすぐ潰れてしまいがちなので。すぐできるけど、すぐなくなるというのは全てのセルフヘルプグループに共通することなんです。

emo&yu-ka:(苦笑)

広野さん:セルフヘルプグループを長く続けるのは、想いだけでできるものではなく、知識も要ります。まずは他のグループとつながることが大事です。私自身、北海道の自助会のリーダーや、関西ほっとサロンに来てくれている仲間に支えられ、日々成長させてもらっています。発達さんって、思い立ったらすぐ作りがちなのですが、それはそれでいいことだと思いますが、何も知らずにやるとトラブルの対処が難しいです。北米のセルフヘルプグループの作り方の本にも「一から始めないこと」と書いてあるそうです。

emo&yu-ka:(苦笑;出会った当日LASSを立ち上げた覚えのある2人は胸が痛い)

■「発達凸凹でよかった」って言えてる?

yu-ka:DDACを超えて、世の中はこう変わっていくんじゃないか、って広野さんが思っておられることがあれば、教えていただきたいです。

広野さん:海外ドラマだと、普通にADHDの人が出てきます。「ADHDなんだ。じゃあこうすればいいよね」みたいな展開なんですよ。面白いキャラ、みたいな扱いですよね。日本でもそんな風に浸透してくれたらね。「障害者なの?」って構えられなくなるんじゃないか、と。

emo:日本社会ってやっぱり遅れてるんですね…。

広野さん:人間って一人ひとり、違うじゃないですか。発達凸凹は、その「違う」ということの延長だと思うのですよ。世の中の過半数が発達凸凹だってことになれば、障害じゃなくなると思うんですよね。マジョリティーか、マイノリティーかっていう。現に、ほっとサロンに、当事者じゃない人が来ることがあるんですが、実際めっちゃ浮いてしまいますね。

結局のところ、障害って数の問題だと思うのですよね。だから「みんな凸凹にしてしまえ!」っていってます。みんなが自分にも凸凹があると気づいて、受け入れて、そのままの自分でいられるような、世の中になればと思いますね。

emo&yu-ka:(笑)「みんな凸凹にしてしまえ!」最高です。

emo:隠れ発達さん(診断をされていないが傾向がある人)も多いですよね。そういう方も、自分らしく、居場所で素を出しやすくなったらいいですよね。

広野さん:そうそう。私も、最初はすんごく頑張って、普通になろうとしていました。けど、今は頑張るのはそんなにいいことじゃないかもしれないと思うんです。NHKバリバラにレギュラー出演されている玉木幸則さんに話をしにきてもらったときに、「脳性麻痺に生まれてよかった」と彼が言っていたんです。

そこで衝撃を受けました。世の中には「病気や障害でよかった」といえる人がいる、どういうことやねん、と(笑)。それで「すごい!かっこいい!私も発達凸凹でよかったと言えるようになりたい!」と思ったんですよ。

emo&yu-ka:(笑)

広野さん:それまでは、自分に出来ることがあるなんて思えなかったんですが、それからやっと自分のできそうなことに、目を向けることが出来るようになったんです。出来ないことは諦めて、ね(笑)。

■広野さんからのメッセージ

yu-ka:最後にメッセージをいただけたらと思います。「大人の発達障害」という概念が知られていなくて、広野さんご自身も診断が欲しくて仕方なかった時代があったんですよね。

広野さん:当時はみんなそうだったと思います。どう生きていったらいいかずっと分かりませんでしたから、「あなたはADHDですよ」っていう証明が欲しかったんですよね。

yu-ka:ADHDを診断された当時の、広野さんご自身に向けてのメッセージをいただけませんか?

「できないことも個性!」

広野さん:「できないことも個性!」って言ってあげたいですね。私は「できない人間はダメだ!」という扱いをずっと受け続けていました。でも、できないことも個性だよと、誰かに言ってもらいたかった。

どうやってもできないことを克服することは苦しかったですし、「みんなとおなじようにできなければならない」という強迫概念みたいなものもあったように思います。片付けを克服しようと思って片づけると、今度は人間関係の悩みがでてくるみたいに、「克服」ってしても「また新たな問題」が生まれるんですよね。必ずしも、できないことを克服することがいいこととは限らないと思うんです。それに、みんながみんな、(『ドラえもん』の)出木杉君ばっかりじゃ、楽しくないじゃないですか(笑)。発達凸凹は助けてもらうことが多い立場なので、「何かを教る喜び」を周りに届ける、そして私たちは「ありがとうと感謝」を届けられる。この関係も「できない」からこそできることだな、と思います。

yu-ka:発達凸凹の診断を受け、悩んでいる方へのメッセージがありましたら、いただけますか?

広野さん:もう、ウェルカ~ム!って感じですね(笑)。

一同:笑

広野さん:「凸凹で大丈夫なんだよ!」「安心して!」と伝えたい。私は、発達障害で、シングルマザーで、そううつもあって、DV被害者でもあり、要は色んな「当事者」なんです。だから、同じ立場の人の気持ちが分かるという意味で、経験できて良かったなと思いました。それを活かして、色んなピアサポートが出来ますしね。

発達凸凹だと、「刺激が多い、濃い人生」が送れます!似た境遇の方に共感できたり、些細なことに喜びを感じられたりしますしね。新たな世界へようこそ!私は、そう心から思っています。

■編集後記(emo)

僕自身今までできないことを克服しようと思い生きてきました。個性=できることと思い自分には個性がないんじゃないかと周囲と比較していました。

丁度広野さんの取材をする前辺りから僕自身の就職活動がうまくいかず「自分はできないことが多くて働くことができない周囲に迷惑をかけてばかりだ」と自分を追い詰めていました。個性に目を向けようと思っても「できることそんなにないし…」と自分にダメ出しをしてしまう日々でした。

しかし、今回の広野さんの「できないことも個性」という言葉に凄く助けられました。肩の荷がとても軽くなりました。今でも辛いこと、苦しいことはありますが「できないことも個性」と少しづつ自分自身に言えるようになり以前の自分と比べると心の余裕を持つことができています。

できないことが多いからこそ人の痛みがわかったり、広野さんもおっしゃっていましたがありがとうと感謝を届けたりすることができるんだなと実感しています。

できない自分を自己否定することが減ることが発達障害お持ちの方の生きやすさに繋がるのかなと思います。

(全5回・広野ゆいさん「発達の凹を克服しない」終 取材:emo & yu-ka 文:yu-ka 編集:yuh & emo 撮影:yuh)

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