「ADDに気づいた嘉村さん・home’s viを作る」場とつながりラボhome’s vi 代表理事 嘉村 賢州さん(中編)

25歳、前職を離れ、仲間とITベンチャーを立ち上げているまさに最中に、大学病院でADDと診断された嘉村さん。初期投資が尽き、会社は惜しくも解散となりますが、実はこうした出来事をきっかけに、嘉村さんと天職「ファシリテーション」との出会いが始まっていきます。

取材させていただいたhome’s viのオフィス「518桃李庵」は訪れるだけでほっこりする場所。たくさんの「魔法の時間」を作った「西海岸」の遺伝子を感じました。

■NPOを立ち上げ、ソーシャルリーダーとして生きる

yu-ka:診断もあり、会社の解散もあり、当時大変だったのではないですか?

嘉村さん:これからどこでどうして生きていくかってみんなそれぞれ考えたの。発達凸凹仲間のAさんと僕は、京都に残ることを決意して。僕はやっぱり「場づくり」がやりたいんだなって気づいた。

前職のITベンチャーで働いている時に、社会起業家のビジネスコンテストに出たことがあって。その時、特にNPO法人み・らいずの河内代表に感化された。「ソーシャルリーダーとか、NPOってかっこいいな。そういう世界で自分も貢献したい」と思わせてくださって。そうして仲間と「home’s vi」というNPOを立ち上げた。

■魔法の時間を広げ、場づくりをしていく

emo:まだ、あまりhome’s viさんのことを知らない方のために、どういった団体か教えていただけますか?

嘉村さん:もともと紹介制町家コミュニティを開いていた時、初対面の方同士が多い空間でも、誰か信頼する人が居るっていうだけで、人間関係構築スピードが早かったのね。それを、僕ら「魔法の時間」って呼んでいたの。初対面だけど、なぜかその雰囲気の中では一日の内に涙を流したり、こっぱずかしい将来の夢を語れたり、自分の弱さを出せたりする時間。無二の親友のように関係が紡がれていく。

この「魔法の時間」というものが、地域、世界中の人に広がったら、これは素晴らしいはずだとも思っていた。で、初めは、学生中心のコミュニティとして「西海岸」をやったけど、地域、世界に開いた「カフェ、フリースクール、コミュニティの合体型」を造ることに価値があると思って、「おむすび庵」を作ろうと。それが当初のビジネスモデルだった。

「魔法の時間」のお話になるととても笑顔になられる嘉村さん。私は、ファシリテーションといえばこの水性ペンのイメージがあります。

しかし、そうするとお客さんである仲間からお金を得ることになり、それはしたくないなと矛盾に悩まされた。コミュニティから稼ぐことを辞めよう。じゃあ、何を稼ぎにする?と考えたとき、ITコンサル、web作り…など考えた。けど最終的な結論は、僕が学生時代に100個ぐらいプロジェクトをやってきた中で培った、場づくりノウハウ、場づくり技術を研究開発して売っていこうということに。『ファシリテーション』っていう概念を研究開発して、教育、まちづくり、組織変革に使う。そうして、home’s vi のコンセプトが定まり、今に至る。こうして、場づくりの専門集団を目指しているんだ。

■ファシリテーション…「20人集まったら何でも出来る」を叶える夢のアンテナ

emo:ファシリテーションにとても興味あるんですけど、嘉村さんが思うファシリテーションとはどういったものですか?

嘉村さん:『西海岸』時代に思ったのは「夢のアンテナ」。昔、僕は教育分野に携わりたくて、「10年後には新しい教育を作る」って言い続けていた。これを歩むってすごく険しい道のり。一人で歩むならね。でも、コミュニティがあったことで何が起こるかというと、面白い教育本や、教育に興味ある学生がいたら、皆が僕に紹介してくれて。

僕も皆の夢を叶えるために、恩返しをして。コミュニティで夢を共有している仲間がいることで、どんどん夢が加速していくわけ。逆に僕が例えで言うのが、東京のマンションの話。何が起こるかというと、マンションのエレベーターで住人と一緒になっても挨拶されない、目が合わない。で言う、「田舎とは違って都会は冷たいね」って。でもよく見ると、住人が実は全員地方出身ということも(笑)。空気がそうさせているんだったら、逆に変えられる可能性がある。

人ってそれぞれ、人脈や能力や性格、すごく豊かなものを持っているはず。だけど「出せない」。傷つきたくないし、いいように使われたくないからね。だけど、本当に信頼関係があって、弱さも、夢も、武器も全部出し合ったら、20人集まったら何でも出来るはず。共有をするためには、安心安全で、信頼し合える場を作らなくちゃいけない。それにはどうすればいいかっていうのを常に考えている。対立、しがらみじゃなくて、化学反応を起こす場を作りたい。だから、そのために僕はファシリテーションを日々磨いていっている。

 

 

 

■参考書マニアは「新しいパラダイムを照らす力」だった

 yu-ka:そういう背景があったんですね。ありのままを出せて、化学反応が起こる場、とても理想的です。home’s viさんのお仕事で、賢州さんが長所(凸)を発揮できたと思われる時、またご自身がイキイキされていると感じた瞬間はありますか?

嘉村さん:場づくりに関しては、人に対して敏感だった部分を活かしたかな。自分は『コミュニケーションコンプレックス』を持っていると思っていたんだけど、その分、人が今言いたいことを言えてないとか、気持ちが沈んだなっていうことが瞬時に分かる。飲み会で、僕が相手の名前を忘れ、コミュニケーションを諦めてしまった経験から、名札を積極的に使おうというアイディアが生まれた。また、何もテーマが無い飲み会で、隣の人と何を話せばよいか悩んだからこそ『話すテーマ』の重要性に気づいた。こうして、自分が感じた飲み会の居心地の悪さを、「こうしたら良いんじゃないか」と場づくりに活かしている。

あと参考書マニアだったから、情報収集が得意で、新しい概念をすぐ取り入れられる。だから、まだ日本にないような、海外の新しいファシリテーションの概念や実験を見つけて、自分たちが一番、開拓の最前線にいると感じるとき、この仕事って天職だなと思う。例えば、まだ日本で、オープンスペーステクノロジー(※1)を、まちづくりに作った事例が無かったときに。「これを使ったら、絶対地域が変わる」と、勉強会を開き、それが「京都きずなサミット」になって、「京都市未来まちづくり100人委員会(※2)に進化した。今もギリシャで新しい概念を見つけて…。

※1 オープンスペーステクノロジー(OST)は、嘉村さんが最も得意とするファシリテーション手法の一つで、関係者が一堂に会して話し合うホールシステム・アプローチの代表的手法です。
※2 京都市未来まちづくり100人委員会は、ファシリテーションによるまちづくりプラットフォームの先駆けで、この時使われた手法論は現在は全国の自治体などで使われるようになっています。

yu-ka:Teal型組織(※3)ですね!

※3 Teal型組織は、①セルフ・マネジメント ②全体性 ③進化的な目的 の3要素をもち、一番進化した組織の形態の1つと言われています。暴力的な関係・組織はRed(赤色)に近く、成果より幸福を追求するほどTeal(青緑色)に近づくと表現されています。
詳しくはこちら!▷http://www.homes-vi.com/teal/ (home’s viさんHPより)

嘉村さん:そう、2016年も、Teal型組織と出会ったり、そういう社会実験や新しいパラダイムを照らしたりすることにワクワクした。あと、喧嘩やもめごとが発生して、場がぐちゃぐちゃしている時って、居心地悪いかもしれないけど、みんなの「何とかしたい」っていう熱い思いの中に入っていって、いい方向にサポートできるってときは、自分の存在感が肯定されているなって感じるね。

■「いい時」も「悪い時」も全面的に受け入れる

yu-ka:home’s viさんに凸凹さんが多いという噂を聞いたのですが、その理由みたいなものって思い当りますか?やっぱり皆さん惹かれ合ったんでしょうか?

嘉村さん:凸凹だらけだよね(笑)。そうだね、類は友を呼ぶというのもあると思うし、混沌とした環境や、人のあらゆる瞬間を受け入れたい気持ちが、そうさせているかな。コミュニティって結構、「綺麗すぎる」と居心地が少し悪いはずなんだよね。例えば、部屋を汚してしまったり、障子を破いてしまったりしたらどうしよう、とか。多少もともと混沌とした環境だったら、割と自由な気持ちで過ごせるというか。僕は、モノを壊されようが怒るつもりは全くなくて。

あと、人は『いい時』も『悪い時』もあるっていうことを全面的に受け入れるつもりがある。「あいつ変わったな」っていう発言が、僕は一番嫌いで。その一言を言われることで、どれだけ、ありのままの自分を出せなくなるのかって悲しく思う。嫌われること恐れて武装しつづけないといけないからね。人は、暴言吐くときも、誰かを傷つけるときもあって、それでも僕から断絶することは絶対しないと決めている。home’s viでも、関わってくれた人を僕からクビにするつもりは全然ないし、出会ったらその人とのご縁は一生ものだと思っていて、ずっと大事にするつもりでいる。その哲学が、割と凸凹をだしやすい居心地に繋がっているっていうのはあるかもしれないな。

emo:ありがとうございます。とても、安心感がありますよね。

嘉村さん:大変だけどね(笑)。

yu-ka:メンバーさん同士で、凸凹を補い合えているっていう感覚はありますか?

嘉村さん:多少ね。それを補う組織の在り方が、これからどんどん洗練されていったらいいなって。他では活躍できなかったけど、home’s viでは活躍できる。そういう人が増えれば増えるほど嬉しいなって。

■home’s viとは、最高だと思える「社会をつくる」チーム

emo:今後の、home’s viさんでの目標はありますか?

嘉村さん:home’s viをやってきてもう10年経つんだけど。「社会変える」っていう言葉が個人的には嫌いで。今をエンジョイしたい、今の世の中って素敵だと思うから。ただ、今って自分らしさをあまり出さずに、働いているでしょ。親が夢を叶えられなくて、子どもに諦めさす、そんな連鎖が起きているようにも感じる。だから、「この時代は最高だ!」と思える社会システムをつくりたい。人と人をつなげたい。実践専門家として活躍したい。自己実現を邪魔する、っていう仕組みを止めたい。豊かな可能性を応援しあえ、喜び合える環境を、実現させたいなと思う。

yu-ka:とても素敵ですね。ありがとうございます。

嘉村さんのお話を伺って、目を輝かせるemo・yu-ka

「魔法の時間」のような空間を与えてくれた誰かが、私にもいる気がします。凸凹が多い私はどうしても凹の部分を隠して生きがちです。むしろ、凹を見せてはいけないのだと、ほんの最近までずっと自分に「呪い」をかけてきたかもしれません。「魔法の時間」は、凸凹さんには一番必要な時間のひとつなのではないでしょうか。

情報収集が得意(凸)だった嘉村少年…home’s viの本棚には嘉村さんが読み重ねたたくさんのファシリテーション本が並んでいました。

文中に出てきた「teal型組織」が増えれば、凸凹さんの活躍の幅が広がるのではないかと話してくださった嘉村さん。今後、LASSでも実践していきたいと強く感じました。

後編では、emo・yu-kaが質問をしながら、嘉村さんのたくさんのご経験から発達凸凹さんの働き方のコツをお話しいただきました。最後までお楽しみに!

(取材・emo・yuh・yu-ka 文:yu-ka 編集:yuh・ emo 撮影:yuh)

 

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