「嘉村さん流・発達凸凹を活かすヒント」場とつながりラボhome’s vi 代表理事 嘉村 賢州さん(後編)

ファシリテーションにおいて、日本の若手リーダーのお一人である嘉村賢州さん。前編・中編では、それぞれ幼少期から社会人になりADDが発覚するまで、ADDに気づいた嘉村さんが天職であるファシリテーションにたどり着くまでをお伝えしました。

後編では、場づくりを専門にしている嘉村さんが考える、発達凸凹さんが満足感のある仕事にたどり着けるヒントについて伺ってみました。後編では話が盛り上がり、カメラを担当したyuhも途中から会話に入っています。

嘉村さん。紙とペンが似合います。

■発達凸凹流のタスクのこなし方

emo:オフィスに貼ってあるタスクスケジュールが気になります(笑)。嘉村さんはタスク管理って、どうされていますか?

嘉村さん:Evernoteにタスクを全部列挙しているよ(編注:最近WorkFlowyに切り替えられたようです)。それでも、つい先延ばしをしてしまうし、難しい案件は、ぎりぎりまで手を付けない。でもこの前読んだ本に、「難しい問題があるときはチャンス」「それより簡単なタスクをこなせる理由を作ってくれる」って書かれていて。大きなタスクがあると、逃げたくなるでしょ?で、その時は思う存分逃げて、他のタスクをこなしまくれって書いてある。

emo&yu-ka:(爆笑)そのプラス発想いいですね。今後試してみます(笑)。

■ありのまま就活のススメ

emo:僕自身、いま就活中なんですけど。発達凸凹で悩んでいる方の就労について、賢州さんならではのアイディアがあれば教えていただけますか?

嘉村さん:まず発達凸凹さんは、たとえば同じ診断名でも、一人ひとり特性の傾向が違うことに気づいてほしい。100人のニート(引きこもり、発達凸凹の方など)がありのまま就活が出来るよう、5日間トレーニングする「レイブル超就活」っていう企画のメインファシリテーションを僕はずっとしていたんだ。スマイルスタイル(※1)さん、DDAC(※2)の広野ゆいさんと一緒にね。

だまし合い就活、もう辞めようよって僕は思っていて。企業も、面接を受ける就活生も。就活生自身の凸凹、両方の部分を初めから伝え、企業がそれを分かって受け入れた方が気持ちいんじゃないかって。

そうやって「ありのまま就活していきましょう」って。「自分の取扱説明書」みたいのがあればいいね。

emo:ああ~いいですね。

嘉村さん:自分のいいとこ、悪いとこ、要は凸凹をちゃんと書いて。凸の部分では、自分をこうやって活用してください、こんな風に活躍できますって伝えて。

凹傾向があり、こんな配慮をしてもらえたら和らぐかもしれない。自分自身で、こういう努力、対策をしていきたいっていう内容を書いて。それ見合わせながら、職場面談が出来たらいいんじゃないかって話を進めていたの。

yu-ka:いいですね!ありのままを伝えることにより、就活生はもちろん企業にも安心感が生まれそうですね。

■唯一無二のマッチングへの可能性

嘉村さん:うん。そういう意味で、今の就労支援施設を全く否定するつもりは無いんだけど、比較的、汎用性スキルを教える傾向にあるよね。支援者にもっと人脈と社会経験があれば、凸凹の人が見事にハマる場所を見つけられるんだけど、支援者のソーシャルなネットワークとデータベースが少ないから、結局、汎用性がある仕事のスキルトレーニングしか出来ないっていう構造があるのではないかな。支援者がもっと色んなところに飛び出し、色んな社会を見て、様々な仕事をしたら、発達凸凹さんに唯一無二の仕事を繋げられるはず。そういうコーディネーターがいると、すごくいいかな。

emo:あ~いいですね、すごく。

嘉村さん:そうそう。例として、統合失調症になって、作業所に通っていた僕の後輩が居るんだけど。ずっとやれていたことをこなすのが難しくなった彼をhome’s viに誘い、働いてもらううちに、少しずつ回復していって。その後輩はタイがもともと好きで、現地で日本語教師として働きたいんだって、ある日気づいたのね。で行ってチャレンジしてみて、ちゃんと1年間やりきっていた。

こういう、個別具体ケースで人の天職を見つけることができる気がするんだけど、そういう運命的な仕事とコーディネートできる人材が少ない気がしている。そこが整ったら、絶対凸凹さんみんな活躍できるところがあると思う。

yuh:発達凸凹さんって、特性からフリーランスなど自営業をするケースもあるけど、支援者は、圧倒的に自営業の経験者が少ないですよね。

嘉村さん:そうだよね。現実に経営者って、凸凹の方も多いなと感じます。かといって「凸凹=経営者に向いている」って結びつけるのも安易だけれど。
僕だって、ファシリテーションっていう、運命的なものに出会えているから、こうやって働けているけれど、転職したら活躍できないと思う。だからって僕が、支援機関を使っていたらファシリテーションと出会えていたかっていうとそうでもなく。どうやったら運命的な出会いをしやすくなるか、みんなでもっと真剣に考える必要があるんだろうね。

■企業のタスク分解・就活生の得意発見

yuh:賢州さん以外の凸凹さんを見てきて、凸凹さんが天性の仕事に出会うコツってありますか?

嘉村さん:まず就活生は、自分が出来ることを理解しきれておらず、面接で言語化できていないかな。会社は、自社の仕事の細かいところまで把握が出来ていないから、excelの打ち込みに困っているのか、アンケート集計に困っいるのか、ちょっとした部屋の書類整理に困っているのか…といった、タスクの分解が出来ていない。
分解したタスクを支援者に繋げる、ということをしないと、満足感のあるマッチングが出来るはずがないよね。

一元的に、営業補助、入力補助って言われても、いざ自分が出来るかって想像がつきにくいから、日常的に現場を見れる機会があったらいいな。当事者も支援者も会社を見学する中で、その仕事だったらできそう!って発見出来ることがあるでしょ。

図を描いて説明する嘉村さん

yuh:なるほど。賢州さんはどうやって、特別な支援の力も使わず、天職と感じられるファシリテーションに?

嘉村さん:大学時代に、いろんなプロジェクト経験をして、自分が得意なことが分かったという点が大きいかな。自由な時間が多かった分、農業体験や、国際交流ボランティアなどの経験が出来た。ボランティアをすると、そこで役割分担があるじゃん。広報、企画、資材を運ぶ係、とかね。やってみて出来なかったら、また次の役割に挑戦出来る。

僕が得意だと気づいたのは、人のモチベーションといった雰囲気を読むことや、イベント中にとっさの判断をすること。トラブルが起こって、みんながどうしようと慌てている時、代案を提示することが多くて。あとは、企画、ブレインストーミングや、情報収集や調査をした上で、人に分かりやすく伝えること、とかね。ちゃんと人の話を聞いてあげることが好きで、人の失敗に寛容な部分も。色んなプロジェクトで試行錯誤した結果が、今のファシリテーションに繋がっていると思う。

その反面、大失敗したこともあるよ。プロジェクトリーダーをやったときに、あまりにも報・連・相(ホウレンソウ)や、調整ごとが上手く出来なくて、代表を更迭されたこともあるしね(笑)。僕は、幸いメンタルが強かったから、なんとかなったかな。それで、失敗してメンタルが落ちてしまう人もいるからさ。

emo:そうなんですね。ストレスコントロールはどのようにされていましたか?

嘉村さん:よく気持ちは落ちていたけど、タフだったんだろうな~。でも我慢した結果、アレルギーっていう形で出ていたんだと思う。当時は気持ちを押し込めていたと思う。ステロイドもすごく使っていたしね。まあ自分のように、体に症状としてあらわれる人は分かりやすいよね。

■凸凹の聖地で、エピソードを分かち合う

yu-ka:ストレスにちなんでですが、発達凸凹さん同士で、「うっかりエピソード」を話せる場を作っているとちらっと聞きました。詳しく教えていただけますか?

嘉村さん:ああ~秘密のメッセージグループね。凸凹失敗談を話せるのはもう、ほんと最高(笑)。癒しのコミュニティ。発達凸凹の友人B、Cさんと、僕、3人で作ったメッセージグループを、『凸凹のサンクチュアリー(聖地)』、って呼んでる(笑)。どうしても先延ばしや失敗をしたら、パートナー、仕事仲間に対して、少し連絡をためらってしまう時もあるけれど。凸凹の聖地にはそのときにも、すぐ失敗談を送る(笑)。常識を遥かに超えた失敗エピソードが送られて、お互いに癒され合う、それが『聖地』。これちょっと出版した方がいいんじゃない?ってくらいびっくりするエピソードがたくさん(笑)。

yu-ka:賢州さんご自身の、いちおしエピソードはありますか(笑)?

嘉村さん:ある日、外の仕事で会議があってね。ちょっと遅刻してそのビルのトイレに寄って、トイレの鏡を見たら、ズボンが前後逆だった。何故か、お尻のポケットが前、チャックが後ろに。

『凸凹の聖地』で報告すると、何でそういうことが起こるんだろうっていう推測が、2人によって始まって、最後に言い当てられる(笑)。

emo:僕も最近、服反対に着ました。

嘉村さん:あるよね~。励まし合っているよ。あっそもそも、何で発達凸凹の一人、Bさんと仲良くなったと思う?僕がワークショップ中に「携帯の充電器を、年に20回くらい買うんですよね、携帯を年10回くらい落とすんですよね」って話していたら、一際目を輝かせて「私も」って興奮気味にBさんが話しかけてくれたんだ(笑)。

一同:(大爆笑)そうだったんですね。

嘉村さん:「この3人の今までの凸凹エピソードを、excelとかにまとめたいよね~。でも、面倒な作業だし、この凸凹3人で誰もまとめられる人いないよね~あはは」って言ってた。そしたらね!1時間後に、Cさんが「まとめちゃった!」って(笑)。タスクに感じると出来ないけど、そう感じる前に、盛り上がっちゃったら出来るみたいな(笑)。そういうのも発達凸凹傾向かもね。

yu-ka:あぁ、とても分かります、分かります(笑)。わくわくしたスイッチが入ったら、過集中によって、短時間で出来るんでしょうね。そのエピソード一覧を見られること、とても楽しみにしています。

■今、凸凹に悩んでいる方へのメッセージ:凸凹が縁を運び絆を結ぶ

yu-ka:最後に、私は、発達障害が20歳で判明したとき、一人で思い悩んでいまして。ある日、本屋で発達障害に関する本を探しており、嘉村さんのエピソードが取り上げられている本(※3)を見つけ、とっても救われた部分があるんですけれど。現在発達凸凹に気づいたばかりで悩んでいる人に対して、嘉村さんからメッセージがあればお書きいただけませんか?

嘉村さん:発達凸凹の人に会ったら、「本当に良かったね」って伝えているんだ。出会ったら、必ず祝福している!

 

発達凸凹さんへのエールをいただきました!

これだね。「凸凹が縁を運び絆を結ぶ」僕はこう思っているよ。

home’s viの語源のひとつは「結び(home’s vi = オムスビ)」だからね。前職の、自分たちで立ち上げたITベンチャー会社でも、縁のある人と出会えるITの仕組みを作ろうとしていて、当初から、「縁」っていうのは、ずっと僕にとって重要なキーワードなんだ。

 

(※1) NPO法人スマイルスタイル
(※2) NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)
(※3) 『ADHDのサバイバルストーリー②本人の想い編 おっちょこちょいにつけるクスリ』高山 恵子 編著 NPO法人えじそんくらぶ 著

 

発達凸凹というパズルのピースに合う働き方。場づくりから世間を見てきた嘉村さんならではの視点でのお話。それぞれに、私はとても共感しました。お話を伺う中で、取材の私たちを含め「人のどんな状態でも受け入れたい」という嘉村さんの想いが強く伝わり、「ありのまま就活」のアイディアはこういう願いが源流になっているのかと感じさせられました。

私も、嘉村さんの言う「ありのまま就活」の考え方が、発達凸凹さんを超えて、就職の面接で一般的になっていく、皆が自分にも相手にも嘘をつかずに仕事をしていける社会になることを願っています。

そのために、発達凸凹である自分たちが今からできる一歩は、失敗を恐れず、自身でなるべくたくさんの経験を重ね、得意分野を発見すること。そして、様々な職業経験をした支援者が増えることで、発達凸凹さんの経験を補い、一人ひとりに合いそうな仕事を提案できるようになる。企業側にも、今後は標準化した誰かに合わせた標準的なタスク設定でなく、個の価値を引き出せるように特性を知って細分化することが、人手不足の解消に有効と言われるようになるでしょう。担い手の違うこういった動きで、発達凸凹さんのこれからの働きやすい社会を創っていくこと、当事者としての心からの願いで

(取材・emo・yuh・yu-ka 文:yu-ka 編集:yuh・ emo 撮影:yuh)

*home’s viさんのHPはこちら!*

https://www.homes-vi.org

<オフショット①:手を繋いで写真撮影>

yu-ka:あぁぁ…手をどう繋げばいいのか、構造を理解できないです(泣)。

嘉村さん:(発達凸凹さんは)立体系を理解するの、無理だよね…(笑)。手をこう、交差させて、スケッチブックをもって、えーっと(笑)。

<オフショット②:目指す組織の象徴>

emo&yu-ka:(ボールが気になって、触る手が止まらない)

嘉村さん:このボール、僕が目指す組織の象徴なんだよね。

一人のリーダーが皆を引っ張っていく(ボール閉じた状態)
組織を作りたいんじゃなくて、みんながフラットに何かを紡ぐような組織をつくりたい。(ボールを開く)
立ち上げた時に、僕が求心力を持っているのは仕方ないけど、広がっていったら、誰が立ち上げたか分からないような上下関係のないTeal型組織になればいいなと思ってる。

 

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